緊急会見から半日、何度考えてもなかなかわからなかったのだが、ようやくひとつの仮説に行き着いた。
どうもこの円高対応基金、対外投資の計画を促進するための呼び水として使うつもりのようだ。
緊急会見と聞いたとき、反社会的勢力との不適切な交際を理由に財務省幹部が引退するのかと思ってしまったのは私だけですかそうですか。
基金の資金は為替介入に用いられた結果として既に外貨に換わっているので、仮にこの基金からの調達資金だけで海外投資を行う場合は潜在的な円の売りが消滅し、円高対策には逆行することになる。
基金が無かったこれまでであれば、海外投資のためには円を売って現地通貨を用意するという為替取引が必要だったが、基金から外貨を直接借りられるとなると、この現地通貨を調達する為替取引が不要になってしまうため、円を売る理由がひとつ減ってしまうからだ。
当初はこのことにばかり目がいってしまったため、基金の意図がよくわからなかったのだが、呼び水として考えると話は変わってくる。
調達可能額が充分でないために計画止まりとなっている海外投資案件に対して、この基金から差額相当を拠出することで計画実行を後押しする。
このようにして大型の投資案件が動けば、それに必要な外貨の一部は円を売ることによって賄われるので、計画止まりになっていた潜在的な円の売りを顕在化させることができる。
私の未熟な頭では、この基金が円高対策を名乗れる理由がこれしか思いつかない。
果たしてそう目論見通りに行くだろうか。
呼び水というからには、最終的に調達される現地通貨の一定割合は円を売ることによって賄われていなければならない。
そうでなければ最初に確認した通り、むしろ円を売る為替取引の潜在的機会が失われるという意味でマイナスに作用してしまう。
そもそも、基金の利用を名乗り出る企業が現れなければ全く円高対策効果が発揮されない。
効果が出るまで時間がかかると見る意見が多いのもこれが原因だろう。
以前の日銀特定事業特融のように、民間への資金供給で資金の流れに向きを与える作戦自体には一定の意味があるとは思う。
しかし、それがどこまで円高圧力に抗する力を持つのかとなると話は未知数だ。
それに一旦円高対策という点から距離を置いて考えると、むしろ本当の目的は下記記事が指摘するように日本版政府系基金(SWF)をこっそり船出させることだったのではないか、とも思えてくる。
とりあえず、最初に利用の名乗りを上げる企業が現れるまでこの案件は一旦脇に置く。
実際のところ、本日時点で失望の反転円高が起きているくらいだから、そういった企業が現れないことには何の効果も期待できないように思うのだが。
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