2011年3月3日木曜日

妨害できる業務

いくら困難な対応を余儀なくされたからといって、それを刑法上の妨害行為と捉えて警察に丸投げし、その結果1つの逮捕歴が生まれたというのは納得がいかない。


入試にデジタル機器で立ち向かったかの受験生には、逮捕歴が付いてしまった。

確かに不正を働いた者には非があるわけだが、だからと言ってその者は逮捕されるべきものなのだろうか。


試験は公正でなければならないが、大学入試は受験生の道徳意識の問題に転嫁し易いという特質上、主催側が公正な試験になるよう環境整備に努めるという意識が働きにくいように思える。

今回被害届を出した主催側に、面倒な対策なんかしなくてもどうせ受験生は集まってくるさ、とばかりに高をくくっていた面があったのではないだろうか。

そうであれば、不正を働いた受験生の特定が困難だからと公権力に訴えるとは聞いて呆れる。

そもそも試験の行われていた状況そのものが不正に対して脆弱なのだから、主催側は困難であろうと何だろうと自前で不正を暴く努力を払うべきだと思う。

そんな連中のせいで逮捕歴を付けられてしまうというのは、どう考えても腑に落ちない。


大学入試はたかが一試験ではない、という主張もあるかも知れない。

大学入試の結果は人生を左右するし、私もその経験はあるから理解はできる。

不正に合格する者がいれば、そのあおりで不合格になる者がいるかもしれないのだから、早く不正を働いた者を特定し、公正な立場で臨んだ受験者から合格者を選ぶべきだ、という主張も成り立つだろう。

だが、それは大事な点を見落としている。

今回、警察の特権で携帯電話の特定に至るという近道が採られた結果、各大学が受験者名簿や答案を付き合わせるなどして不正を働いた者が特定できたかどうかは不明確なままだ。

確かにそれには膨大な労力を強いられるだろうが、もともと試験の環境を整えていなかったのであれば、償うべき労力ともいえる。

それに、あおりを受ける者が出るというなら、不正を働いた恐れのある者の人数に応じて少し多めに合格を与え、精査の後に不正な合格者に対し遡って合格を取り消すという方法もある。


自ら不正を働いた受験者を見つけようという姿勢が、主催側には見られない。

最初から無理だと思い込んでいるのか、面倒だと思っているのか。

不正防止対策の脆弱さとならんで、この事後対応の他人任せ具合が気になる。


少し本筋から逸れるが、今回の顛末でもっとも衝撃を受けたのは「質問された長文英訳に対して数分後に寄せられた回答がgoogle自動翻訳によるものである可能性が高い」という報道に触れたときだった。

そもそも質問サイトに投稿できる状況にあれば自動翻訳サイトだって利用できるはずだ、ということに回答者は気づいていたのだろうか。

もしそれを認識した上でこの回答を寄せているのだとしたら、この回答者こそ相当の食わせ者だ。

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